遺伝子専門医、遺伝子専門家とはなにか

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臨床遺伝専門医

臨床遺伝専門医は日本において遺伝診療に従事する医師がもつ専門的な資格です。日本人類遺伝、日本遺伝カウンセリングの両学会による臨床遺伝専門医制度で資格認定されます。内科や外科、産婦人科や小児科などそれぞれの専門分野を習得した後に3年以上遺伝診療に関わり研鑚を重ねることで遺伝を専門に扱う臨床遺伝専門医の専門資格を取得することができます。

遺伝にかかわる病気、疾患はさまざまあり、すべての診療科にまたがってくる分野です。ほぼすべての診療科から遺伝を扱う疾患の相談に応じて適切な遺伝医療を行うこと、そして予想される遺伝子に関係した病気、疾患などの問題を解決することに努めています。遺伝医学の研究や教育への貢献も求められているのが臨床遺伝専門医です。

臨床遺伝専門医の資格を取得している医師としては産婦人科や小児科を専門分野としてもつことが多く、稀少疾患の多い小児科、先天性の病気をスクリーニングすることも多い産婦人科で多いことは当然といえます。しかし、成人してから発症する病気やがんなどでも遺伝の関与が明らかになってきたことから遺伝疾患は各診療科でみられる病気といえます。

病院、大学病院によっては遺伝診療科として独立した科、外来をもっていることも多く、様々な領域の医師が臨床遺伝専門医として遺伝カウンセリングにあたっています。

  • 家族が遺伝病と診断され、自分も同じ病気にかかるのではないか
  • 先天性疾患の子どもが生まれ、次の子も同じ病気になるのではないか
  • 遺伝子検査を勧められたけれどどうしたらいいのだろう
  • 先天性(遺伝性)の病気について原因を検査したい
  • 妊娠中に受けた検査結果について詳しくしりたい

遺伝診療を受診する方はこのようなことを気になっているのではないでしょうか。

遺伝という言葉は日常生活においても多く耳にしますし、顔つきや体質などが遺伝により似るというのは周知のことと思います。しかし、実際に遺伝により病気を発症しやすいということになるととても大きな問題でありデリケートな問題となります。

遺伝子の解析が容易に行うことができるようになり、一般診療科でも疾患と遺伝の関連が明らかになってきました。遺伝医療では医学的な課題だけでなく、関連が深い倫理的・法的・社会的な課題についても考慮した医療の提供が必要となります。

遺伝情報は本人にとっては生涯変わらない個人情報であり、情報の一部は親族も持ち合わせているという特性があります。本人だけでなく周囲との関わりも大きく倫理的にも慎重にならざる得ない領域であり、遺伝情報という特性を十分に理解し知識をもった専門家の関与が不可欠といえます。

認定遺伝カウンセラー

医師でなくても遺伝診療に関わることができます。認定遺伝カウンセラーは臨床遺伝専門医と同様、日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会の共同認定により資格を取得できる遺伝診療のエキスパートです。

2005年4月1日より制度がスタートし、2020年4月時点で国内では267名の遺伝カウンセラーが活躍しています。遺伝カウンセラー認定養成課程を設置した大学院を修了することで遺伝カウンセラーの資格認定試験の受験資格を得ることができます。

一定の実地修練を積み、筆記試験と面接試験に合格することで資格認定となります。実際には看護師や保健師、助産師などのメディカルスタッフであったり臨床心理士、社会福祉士、薬剤師、栄養士、臨床検査技師などのコメディカルスタッフ、その他には生物・生化学などの遺伝医学研究者や人文・社会福祉系などの専門職のひとが遺伝カウンセラーとして活躍することが想定されています。

臨床遺伝専門医が医学的な立場からカウンセリングを行いますが、認定遺伝カウンセラーは心理的・社会的立場であったり、倫理的な影響などについてなど様々な観点からカウンセリングを行います。もちろん、遺伝性疾患に関する正しい知識を身につけていることが必要であり、医師とは異なった立場で遺伝診療を担っていてきます。遺伝専門医や主治医、診療部門との協力し合いながら遺伝診療を受ける本人および家族をサポートしていきます。

遺伝医療が発展する中ではニーズが高く、カウンセラーとしての遺伝診療の実地に関わるだけでなく、遺伝の関連する研究機関であったり、検査会社で活躍している認定遺伝カウンセラーもいます。

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遺伝看護専門看護師

2017年に新たにできた資格で、看護師として3年以上の遺伝看護実務を含む5年以上経験をもち、看護系の大学院の修士課程修了後に試験をうけることで取得できます。

遺伝にまつわる課題を見極めること、診断・予防・治療に伴う意思決定を支援し、生活の質を向上させることを目指すこと。生涯にわたって、かつ世代を超えて必要な医療やケアを受けられるような体制をつくれるよう臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーと共に遺伝医療を支えていきます。

遺伝専門職にもとめられること

一般向けの(DTC)遺伝子検査サービスが普及するなど日本でも遺伝医療が少しずつ身近な存在になってきているかと思います。気軽に遺伝子検査が受けられるようになる一方で、遺伝子は一生変わることのない個人情報であり、それでいて家族、親族とも遺伝学的情報は一部共有されていることから個人だけでなく血縁者にも関連していています。

産婦人科領域においては、平成25年に「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)」の指針が出され、出生前検査として広く行われるになってきました。母体血を採取するのみであることから妊婦への身体的リスクがなく行われる検査であり今後もさらなる普及が予想されます。

遺伝医療は本人、その家族さえ知らないようなプラーベートな事情に踏み込むことになります。医療どの分野でもチーム医療の必要性が問われている今日ですが、遺伝医療の分野でもチーム医療の重要性は強く認識されており、臨床遺伝専門医といった医師だけでなく、遺伝の専門家である認定遺伝カウンセラーや遺伝看護専門看護師、その他の診療科の主治医やその他コメディカルとの連携がとても重要です。

「予測医療」というまだ病気になっていないものの遺伝的傾向から発症の可能性があるとされている健康な人へも医療を提供するという遺伝医療。病気を発症しているときには検査や治療といった直接的な医療介入が必要な部分もありますが、健康な人へはカウンセリングや生活指導などのケアが主なサービスになります。

遺伝ということへの理解、検査のメリットデメリットを正しく理解した上で納得して遺伝子検査の受検可否の意思決定を行っていただくこと、また、検査を受けた場合には、結果を正しく解釈すること、その後の検査や治療の選択、 遺伝医療のなかで遺伝の専門家のはたす役割はとても大きいといえます。

遺伝医療をうける際には、信頼のできる遺伝専門医、遺伝子専門家のもとで納得のいく理解を得た上で慎重に診察をうけていくことをおすすめします。

参考文献

  • 認定遺伝カウンセラー制度委員会 http://plaza.umin.ac.jp/~GC/About.html
  • 臨床遺伝専門医制度委員会 http://www.jbmg.jp/
  • 遺伝学的教育の関するQ&A 日本人間ドッグ学会
  • https://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2019/01/DOCK-idensiQA.pdf
  • 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」 http://jams.med.or.jp/guideline/genetics-diagnosis.pdf
  • 公益財団法人 日本看護協会 https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cns

記事の監修ドクター

木村 眞樹子先生

木村 眞樹子先生

内科医師。都内大学病院で内科として在勤中。産業医として企業の健康経営にも携わっている。プライベートでは3児の母。
総合内科専門医。循環器内科専門医。日本睡眠学会専門医。ビジョントレーニング指導者1級資格

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