妊娠が分かったとき、健康な赤ちゃんが生まれるか気になる人も多いでしょう。近年、妊娠中に赤ちゃんの疾患が分かる検査の中でも、注目されているのが新型出生前診断(NIPT)です。検査を受けて、妊娠に影響がないか気になりますよね。
この記事では、新型出生前診断のリスクや検査の流れについて解説します。検査を受けようか検討している人はぜひ参考にしてみてください。
新型出生前診断とは
妊婦さんの血液を採取してその中に含まれる胎児のDNAのかけらを調べる検査です。DNAは遺伝子情報が詰まった設計図のようなもので、染色体という細胞に含まれています。染色体にある遺伝子は、父親と母親の両方から受け継がれるものです。
染色体に異常があると、おなかの赤ちゃんが先天異常を持って生まれる可能性があります。特に先天異常の中には、高齢出産と関連があるものもあり、近年、新型出生前診断を受検する人が増えています。
※新型出生前診断の正確な名前は「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」または「無侵襲的出生前遺伝学的検査」といいます。
新型出生前診断で分かること
先天異常は、妊娠した年齢にかかわらず、赤ちゃん全体の3~5%みられることが統計的に明らかになっています。このうち先天異常の25%を占めるのが染色体異常によるものです。
新型出生前診断では、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つの染色体の数の異常の可能性について知ることができます。
3つの先天異常に限定されているのは、新型出生前診断により妊娠中絶を選ぶ人もおり、安易な「命の選別」につながらないようにするためです。3つというと少ないイメ―ジですが、染色体異常の70%を占めるものです。
具体的な3つの先天異常の特徴は以下のようになります。
先天異常 | ダウン症候群(21トリソミー) |
---|---|
症状 |
成長障害、筋肉の緊張の低下、特徴的な顔貌 ≪合併症≫ 心臓の病気、消化器の奇形、そのほか甲状腺や耳鼻科の病気など |
予後について |
多くの場合、支援クラスや特別支援学校に通う。美術など才能が優れていることもある。 寿命はおよそ50~60歳。 |
先天異常 | 18トリソミー |
---|---|
症状 |
胎児期からの成長障害、呼吸や摂食に障害がみられる ≪合併症≫ 心臓の病気、消化管の奇形、関節の拘縮など |
予後について |
身体や知能の発達の遅れがみられる。呼吸の補助が必要になることがある。 妊娠中に胎児が死亡するケースが多い。出産後1カ月で亡くなるのが50%、1年でなくなるケースが90% |
先天異常 | 13トリソミー |
---|---|
症状 |
成長障害、呼吸や摂食に障害がみられる ≪合併症≫ 口唇口蓋裂、心臓の病気、目の病気など |
予後について |
身体や知能の発達の遅れがみられる。呼吸の補助が必要になることがある。 出産後1年以内に亡くなるケースが90% |

新型出生前診断のリスクについて
新型出生前診断を受けるうえで、母子の健康に悪影響を与えないか気になる人は多いでしょう。検査で行われるのは妊婦さんへの採血なので、リスクはほとんどありません。
腕などに注射針を刺すときに、多少の痛みを感じることはあるかもしれませんが、体にとって大きな影響を与えることはないでしょう。新型出生前診断は、母子ともにリスクを気にせずに安心して受けることができます。
確定検査はリスクをともなう
かなり低いリスクで行える新型出生前診断ですが、検査で陽性になったときは、確定診断のために確定検査を行う必要があります。新型出生前診断の感度は99%といわれていますが、まれに偽陽性になることもあるためです。
確定検査は、母子に負担がかかるため流産などのリスクをともないます。具体的な検査には以下のものがあります。
絨毛(じゅうもう)検査
妊娠早期の胎盤の一部にある絨毛という細胞を採取して調べる検査です。絨毛は妊娠の初期の胎盤の一部に含まれている細胞です。検査は妊娠10~13週に行います。
検査方法はお腹に直接針を刺す方法と、膣からカテーテルを使用して検体を採取する方法があります。流産のリスクが1%ほどあり、そのほかにも出血や破水を起こすことがあります。
絨毛検査はエコーで胎児の位置を確認しながら行われますが、技術的に難しく、実施している医療機関が少ないのが特徴です。
羊水検査
妊婦さんのお腹に針を刺して、羊水を採取する検査です。羊水は胎児が飲んだり排尿したりするため、胎児由来の細胞が含まれています。検査では羊水に含まれる細胞を培養した後、遺伝子の解析を行うため、結果が出るまでに3週間ほどかかります。
羊水検査は絨毛検査よりもリスクが低い検査ですが、0.2~0.3%の確率で流産や破水が起こすことがあります。実施時期は妊娠15~18週です。
なお、新型出生前診断の確定検査は、検査で陽性になったときに必ず受けなければいけないものではありません。絨毛検査や羊水検査は、親御さんのご希望によって行われます。
ほかの出生前診断のリスクについて
新型出生前診断は母子にとって安全性の高い検査ですが、確定検査はリスクがともないます。そのため、そのほかの出生前診断について気になっている人もいるでしょう。ここでは新型出生前診断以外の検査のリスクについてみていきます。
超音波検査(エコー検査)
超音波検査は妊婦健診でも行われる検査で、エコー検査とも呼ばれています。具体的には、妊婦さんのお腹に超音波の出る機器を当てて、反響を画像化します。検査中は、妊婦さんもモニターを一緒に確認することができます。
超音波検査は、主におなかの赤ちゃんの成長や発育について確認するために行われます。その一方で、超音波検査によって、おなかの赤ちゃんに何らかの異常が見つかるため、広い意味で出生前診断のひとつといえます。
検査そのものは短時間が行われるので、おなかの赤ちゃんにリスクを与えることはありません。検査にあたって妊婦さんの腹部にジェルを塗るので、冷たさを感じることがあります。
検査で異常が見つかった場合は、診断を確定するために確定検査を受ける必要があります。
母体血清マーカー検査
血液検査によって胎児の先天異常の可能性の有無を調べます。新型出生前診断と同じように、検査は妊婦さんへの採血のみなので、母子にとってリスクの少ない検査です。
検査では、以下の病気の可能性について知ることができます。
- ダウン症候群(21トリソミー)
- 18トリソミー
- 開放性神経管奇形(二分脊椎症、無脳症)
母体血清マーカー検査は妊婦さんの血液中に含まれる成分を調べますが、どの成分を調べるかによって種類があります。具体的な母体血清マーカ―検査には以下のものがあります。
クアトロテスト
妊婦さんの血液に含まれる4つの成分(hCG・AFP・uE3・インヒビンA)について調べる検査です。
トリプルマーカーテスト
妊婦さんの血液に含まる3つの成分(hCG・AFP・uE3)について調べる検査です。
クアトロテストとトリプルテストについてですが、2つの検査の精度に大きな差はありません。検査の精度とは陽性の的中率のことをいいます。
ただ血清マーカー検査の結果は確率で表記されるため、検査結果の解釈が難しいといえます。また、検査はあくまでスクリーニング(振り分け)を目的としており、診断のためには確定検査を受ける必要があります。
コンバインド検査
母体血清マーカー検査と超音波検査の2つを行う検査です。採血とエコー検査の組み合わせなので、母子にとってほとんどリスクはありません。
採血では、妊婦さんの血液に含まれる2つの胎児由来の成分(hCG・PAPP-A)を調べます。コンバインド検査では、以下の先天異常の可能性について知ることができます。
- ダウン症(21トリソミー)
- 18トリソミー
以上のように、新型出生前診断をはじめ、診断に至らない「非確定検査」は、ほとんどリスクなく検査を受けられます。一方、非確定検査で陽性になったときは、リスクのある確定検査によって診断を得ることができます。改めて、新型出生前診断をはじめとする出生前診断をまとめてみます。
非確定検査 | ||
---|---|---|
新型出生前診断(NIPT) |
ダウン症(21トリソミー) 13トリソミー 18トリソミー |
採血のみなのでリスクがほとんどない。妊娠9週以降に実施。 |
超音波検査 | ダウン症(21トリソミー)を含む重大な先天異常の有無の評価 |
妊婦健診でも行われる検査で、リスクがほとんどない。 胎児の先天異常の可能性の評価は、妊娠11~13週頃に実施。妊娠19~20週、28~30週にも成長や発育や、心臓や骨の病気がないかをみる。 |
コンバインド検査 |
ダウン症(21トリソミー) 18トリソミー |
超音波検査と採血を組み合わせた検査で、リスクがほとんどない。妊娠11~13週頃に実施。 |
母体血清マーカー検査 | ダウン症(21トリソミー) 18トリソミー 開放性神経管奇形 |
採血のみなのでリスクがほとんどない。妊娠15~18週以降に実施。 |
確定検査 | ||
---|---|---|
絨毛検査 | 確定診断 | 腹部等に針を刺すため、流産のリスクがある(1%)。妊娠10~13週に実施。 |
羊水検査 | 確定診断 | 腹部に針を刺すため、流産のリスクがある。(0.3%)妊娠15~18週に実施。 |
なお、認可外施設における新型出生前診断では、指定の3つの先天異常以外の病気の可能性についても調べることが可能です。当院では、新型出生前診断に関するさまざまなプランを用意しています。
ご希望に応じて、全染色体(Y染色体を除く)を調べたり、双子を妊娠中の方への検査もできます。出産前に赤ちゃんの健康状態が知りたい方は、検討してみるとよいでしょう。

当院での新型出生前診断の流れ
当院では、新型出生前診断の予約を電話やウェブで受け付けています。検査当日の流れは以下のようになります。
STEP1 受付
来院後、受付にてお名前を伝えください。スタッフが個室へご案内します。検査を受けるには、妊娠中であることを証明していただくために、以下のものをご持参ください。
- 母子手帳
- エコー写真
STEP2 医師による問診と検査説明
個室で新型出生前診断のビデオをご覧になった後、医師による問診と検査の説明が行われます。その後、患者様が内容について納得された上で、検査の同意書にサインしていただきます。
新型出生前診断について疑問や不安が残る場合は、ご遠慮なく聞いてください。気になる点があれば、事前にメモなどでまとめておくのもおすすめです。
STEP3 採血
検査の同意された後、看護師が採血を行います。この時、検体とご本人が一致するかどうか、お名前を確認させていただきます。
採血で10ml程度の血液を採取します。基本的に肘の内側部分に行いますが、血管が細く取りにくい等ありましたらお申しつけください。
STEP4 ご会計
検査が終わりましたら、待合室にてお待ちください。受付でお名前を呼ばれたら、会計となります。会計時に、検査結果の受け取り方について説明させていただきます。
当院では、新型出生前診断の検査結果は、2~6日後にEメールでお知らせします。
※検査のキャンセルについて
当日、つわりなどで来院ができない場合は、電話で連絡してください。それ以前の検査のキャンセルは予約日の前々日までに電話または当サイトの「お問合せフォーム」から連絡可能です。
予約日の変更については、予約日の前々日までにウェブのお問い合わせフォームから受け付けております。
検査で陽性になった場合
新型出生前診断で赤ちゃんに先天異常の可能性があると分かったとき、思い悩んでしまう人は少なくありません。検査をきっかけに、重大な判断を迫られることもあるでしょう。
当院では、ご希望の患者様に対して、専門家によるカウンセリングを行っています(30分5000円)。カウンセリングでは、お気持ちを引き出して、患者様自身で意思決定するのをサポートします。そのほかにも障がい児に対する社会的なサポートの説明も行っています。
カウンセリングをご希望の方は、まずはお問い合わせください。

まとめ
新型出生前診断は妊娠の早い時期に、母子に負担をかけずに行える検査です。当院の新型出生前診断は、指定の染色体異常のほかにも、幅広い先天異常の可能性についても知ることができます。
陽性だった場合のアフターフォローとして、検査後のカウンセリングも行っています。新型出生前診断を検討している方は、お気軽に相談ください。
記事の監修ドクター

白男川 邦彦先生
ヒロクリニック名古屋駅前院 院長
日本産婦人科学会専門医
産婦人科専門医として40年近くにわたる豊富な経験を持ち、多くの妊婦さんとかかわる。
現在はヒロクリニック名古屋駅前院の院長としてNIPTの検査担当医を行う一方、全国のヒロクリニック各院からのオンラインで妊婦さんの相談にも乗っている。
経歴
1982年 愛知医科大学付属病院
1987年 鹿児島大学附属病院 産婦人科
1993年 白男川クリニック 院長
2011年 かば記念病院
2019年 岡本石井病院
2020年 ヒロクリニック名古屋駅前院 院長