バニシングツインとは。症状と影響について

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双生児にのみ生じる「バニシングツイン」。胎児が消失することに不安を感じることもあるでしょう。バニシングツインの仕組みや時期、影響やNIPTの有無など、バニシングツインについて紹介します。


「バニシングツイン」について聞いたことがありますか?双子を妊娠した際に生じる症状だと言われており、「胎児がいつの間にか消える」不思議な症状でもあります。

胎児が消える症状はもちろん驚きますが、それ以上に「自分の体内で何がおきているの」「私の子供は大丈夫」など、不思議な現象に対して気が気ではありません。分からないことだらけで、不安もあるでしょう。

バニシングツインになるとどのような影響があるのか。仕組みや症例など、バニシングツインについて紹介します。

バニシングツインとは

バニシングツインとは、「胎児が子宮から消えてしまう」不思議な現象のことです。妊娠初期に生じる現象であり、「亡くなった双子(ツイン)の片割れがいつの間にか消失(バニシング)している」ように見えることから、バニシングツインと呼ばれるようになりました。

一見すると不思議な現象に思えますが、その仕組みは、亡くなった胎児が死産されず子宮に吸収されることで消失したように見えるのです。

一般的に妊娠初期時に流産した胎児は、自然に排出されるのを待ちます。難しい場合には子宮内容除去術を行うこともありますが、子宮内膜を傷つけることもあるためあまり行いません。

ですが、稀に自然排出されるのではなく、なぜか子宮内に吸収されることがあり、それがバニシングツインの正体だというわけです。医学的には「双胎一児死亡」とも呼ばれており、バニシングツインは不思議現象なわけではなく、双生児の一方が死亡(流産)したということがわかるでしょう。

とはいえ、珍しい症状であることには変わりありません。医学の発展によって少しづつ解明されてきましたが、不明な点も多い症状です。

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バニシングツインの原因・対策法

バニシングツインは「胎児が亡くなることで吸収」されてしまう不思議な現象ですが、実のところ、「なぜそのような現象になるか」という原因はよく分かってはいません。

バニシングツインは双胎一児死亡と呼ばれるように「一方の胎児が流産」する症状です。流産する主な原因は染色体異常であることから、バニシングツインも染色体異常が原因であるとは考えられていますが、その後「なぜ吸収されるのか」までは、明らかになっていないのです。

大切な我が子を守るために何か対策をしたいと思うかもしれませんが、原因が分からなければどうすることもできません。そもそも、染色体異常自体胎児が原因であることから、母親が何かしてあげることは難しいです。

流産は他にも、外部からの衝撃や精神的なショックにより生じるとも言われています。少しでも流産しないために、喫煙や薬の服用を控え、身体を大切に扱ってください。

バニシングツインの確率

バニシングツインは、双子を妊娠すると約10~15%の確率で生じると言われています。

双子を妊娠する確率は約1%と言われていますので、単純に考えればバニシングツインになる可能性は、全体の約0.15%というわけです。

珍しい症状にも思えますが、約1,500人に1人と考えると、決して少ないとは言えません。ダウン症が約1,000人に1人と言われていますので、確率的にはダウン症よりも少ない程度と言えます。

もちろん、あくまでも確率の話ではありますが、知らないだけで身近で起きていてもおかしくはないでしょう。

妊娠、特に双子の場合には、バニシングツインになる可能性もあることを充分意識してください。

一卵性の方が確率が高い

バニシングツインは、一卵性の双子の方が生じやすいと言われています。というのも、一卵性の双子は、1つの羊膜に無理矢理2人入っているからです。

一般的に、妊娠すると1つの胎盤に繋がった羊水の中で赤ちゃんは育ちます。双子の場合には、受精卵が二つあるため羊水と胎盤も2つあり、それぞれの羊水の中で育つことで、二卵性双生児として生まれるのです。

ですが、一卵性の双子は一つの受精卵が分裂して生まれてきます。そのため二卵性双生児のように羊水と胎盤は2つ準備されておらず、分裂する時期によって一絨毛膜一羊膜性、一絨毛膜二羊膜性、二絨毛膜二羊膜性に別れます。

一絨毛膜一羊膜と一絨毛膜二羊膜性は、1つの胎盤に同室している状態であり胎盤に送られてい来る栄養(血液)を2人で分け合っています。それにより、栄養供給のバランスが不均等になることもあり、片方の胎児が成長しきれず亡くなってしまうことも珍しくはありません。

他にも、へその緒が絡まって影響が送れなくなる「臍帯相互巻絡」や羊水供給過多などの症状から胎児が亡くなることもあり、二卵性の双子よりもバニシングツインになりやすと言われています。

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バニシングツインが生じる時期

バニシングツインが生じる時期は、妊娠から約6~8週目の妊娠初期に起こります。妊娠8週目までにはほとんどの胎児で心拍が確認できるのですが、バニシングツインの心音は段々と小さくなっていき、次第に心音が止まってしまうのです。

前回の診断時には聞こえていた心音も、次回の心音では聞こえなくなるのは、とても心にくるものがあります。

妊娠約8週目までを一つの区切りと考え、心の準備もしておいてください。

また、バニシングツインが生じにくいとはいえ、妊娠約8週目以降でも流産のリスクは存在しています。

出産するまでは何が生じるか分かりません。最後まで気を抜かず、しっかりした体勢で妊娠生活を続けましょう。

バニシングツインによる影響

バニシングツインが生じた場合、気になるのは他への影響です。消失するとはいえ、何も影響が無いとは限りません。残された胎児は安全なのか気になる人もいることでしょう。

結論から言うと、基本的には母子共に大きな影響はありません。子宮に吸収されても母体に影響はなく、胎児は育っていきそのまま元気に出産されます。

ですが、胎盤が一つしかない一絨毛膜一羊膜と一絨毛膜二羊膜性の場合には、影響が出る場合もあります。片方が吸収されることで変化が生じてしまい、脳障害や場合によっては一緒に亡くなってしまうこともあるのです。

ただ、あくまで可能性があるだけで、確率的には高くはありません。仮に問題が生じても、すぐに医師による対応が施されますので、実際にはあまり悲観的になる必要はないでしょう。

一卵性双生児の場合には、影響があるかもしれないと言うことだけを覚えておいてください。

バニシングツインは体内に残ることもある

一般的にバニシングツインが生じると、胎児の痕跡を残さず消失してしまいます。痕跡が一切無くなってしまうことも、バニシングツインが不思議な現象と思われた、一つの理由とも言えるでしょう。

ですが、稀に胎児がいた痕跡が残ることもあります。指や歯など身体の一部が体内で吸収されずにそのまま残り、もう一人の胎児の身体へと宿ってしまうのです。

「寄生性双生児」と呼ばれるきわめて稀な現象であり、実際にマレーシアのニュースで紹介もされました。

マレーシア・ケダ州のスンガイ・プタニ市に住む15歳の少年が、ある日激しい腹痛によって病院に運ばれます。腹痛の原因は「異物」であることから摘出手術が行われたのですが、実際に異物を取り出してみると、育った人間のパーツであることが分かったのです。

髪、頭部、手足、生殖器まで存在する寄生性双生児であり、関係者全員を驚かせました。

普段から食欲旺盛な少年だったため、食べた栄養が本人だけではなく寄生性双生児に流れ、それによって育ったのではないかと考えられています。

また、インドでも寄生性双生児の事例が報告されています。2016年、インドのウッタル・プラデーシュ州に住む腹痛に悩む女性からは、髪や歯だけではなく骨まで残った総重量約2.5kgの寄生性双生児が確認されたそうです。

他にも、2010年に香港で生まれた赤ちゃんが、体内に双子を宿していた記録も残っています。

生後3週間で行われた摘出手術では、体内からはへその緒、手足、皮膚、胸郭、骨、腸、脳の組織が確認されたのです。

このような、「バニシングツインした胎児が片割れの胎児に宿る」現象は、新生児約50万人に1人の確率<で生じると言われています。

日本では年間約80万~90万人新生児が生まれると報告されており、単純計算では新生児の1~2人は体内に何らかの異物を有していることなるわけです。世界中で考えれば、寄生性双生児が宿る新生児はもっと多いと言えるでしょう。

もしかしたら、身近な人の体内に寄生性双生児が宿っているかもしれません。

世界でも珍しいマイクロキメリズムの赤ちゃん

バニシングツインによる痕跡は、寄生性双生児だけではありません。胎児に吸収されることによって遺伝子情報が受け継がれることもあります。

2014年、ワシントンのある家庭に元気な赤ちゃんが生まれました。新しい命の誕生に夫婦は大いに喜んだことでしょう。

ですが、血液検査をしたことで状況は一変。生まれた赤ちゃんの血液型が、両親からは生まれるはずの無い血液型だったのです。

夫婦は人工授精による妊娠だったことから「受精した際に取り違えがあったのでは」と疑い病院に確認しますが調べて見ても問題はなく、原因不明であることから困惑してしまいます。

そこで、夫婦はスタンフォード大学に所属する遺伝子学者「バリー・スター」博士に、原因究明の相談をしました。

博士は遺伝子検査を実施しましたが、結果は間違いなく親子であることが判明します。そのことから、博士は「マイクロキメリズムではないか」と予想を付けたのです。

マイクロキメリズムとは、2セット以上のDNAを持つ特殊な遺伝子情報のことです。本来、子供は父親と母親のDNAをそれぞれ所持して生まれて来るのですが、マイクロキメリズムでは、夫婦とは違った別のDNAも所持しています、つまりは、3セット分のDNAを所持するわけです。血液型が違っていたのも、別のDNAも所持していたからと言えるでしょう。

では、3つ目のDNAセットは誰なのかと言うと、バニシングツインで消えた双子ではないかと考えられています。

調べた結果、赤ちゃんは元々双子だったことが判明しており、バニシングツインによって一方の胎児が消失していました。バニシングツインによって吸収されたDNAは、母親だけではなく一方の胎児にも吸収されていたのです。

他にも、マイクロキメリズム(キメラ遺伝子)であることから、DNA鑑定による親子間が認められないと判断された事例もいくつか存在しています。

寄生性双生児にしろマイクロキメリズムにしろ、バニシングツインは時として人間の想像を遥かに超えた不思議な症状を引き起こすのです。

バニシングツインでもNIPTはできる?

出産前に染色体異常が分かるNIPTですが、バニシングツインであっても実施することが可能です。

ですが、一方の胎児が吸収されているという特殊な事情から、偽陽性、偽陰性、性別の不一致などが生じる可能性が、一般的な親子よりも高くなっています。

正確な診断をしてもらうためにも、担当医師に相談・報告をしておきましょう。

また、病院によってはバニシングツインへのNIPTを実施していません。病院選びに注意してください。

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自分を責めるより残った我が子を大切にする

バニシングツインは、端的に言ってしまえば双胎一児死亡によって生じる症状です。誰だって、我が子が亡くなる経験はしたくはありませんが、バニシングツインになる原因は不明であり、予防することも難しいです。

たとえ母親に原因が無かったとしても、亡くなってしまったことは事実であり、人によっては、自責をしてしまうかもしれません。

ですが、まだ一方の胎児は体内で元気に育っています。流産は精神的なショックにより生じるとも言われており、自責はあまりよくありません。

残された胎児のためにも、気持ちを切り替えて子育てを続けてください。

そして、バニシングツインで消えてしまった子供のためにも、残された子を人一番可愛がってあげましょう。

参考文献

  • NPO法人 SIDS家族の会「死産について」
    http://www.sids.gr.jp/stillbirth.html
  • 国立成育医療研究センター「多胎妊娠外来」
    https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/senmon/tatai.html
  • livedoor NEWS「マレーシアの少年の腹部から生き残れなかった双子の一人を発見」
    https://news.livedoor.com/article/detail/11582168/

excite.ニュース「世界初! 不倫してないのに”知らない子ども”が生まれてしまった…! 怖すぎる遺伝子の話」
https://www.excite.co.jp/news/article/Tocana_201510_post_7748/

記事の監修ドクター

岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業

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