ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは?特徴や原因、症状

4番染色体短腕に位置する遺伝子群が失われることで引き起こされる疾患「4p欠失症候群」(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)。国の指定難病に認められており、顔貌上の特徴や成長障害、発達遅延を呈する症候群です。
本記事では、4p欠失症候群に関する特徴をはじめ、原因や症状、治療法について解説します。

国の指定難病にも認定される「4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)」

「ギリシャ兵士のヘルメット様」とも称させるように前頭部から続く、幅広く隆起した鼻梁が特徴的な顔貌、胎児期からの成長障害、精神発達の遅れなど、数多くの症状が特徴的な4p欠失症候群。

しかし、従来の診断技術の精度ではより高確率な診断ができなかったため、現在ではより多く発症しているのではないかと言われています。

本記事では、4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)に関する理解度を深めるために、同病気の特徴や発症する原因、具体的な症状をはじめ、現在行われている治療法やNIPT(新型出生前診断)との関係性について解説します。

4p欠失症候群の特徴

4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)は、微小欠失症候群の一つに挙げられ、通常の染色体検査では症状を見つけ出すことが難しいとされてきました。

そのため、見逃されることも多く、現在でも発症確率が定かではない病気です。

また一部遺伝的ではあるものの、この多くが突然変異的に発症するため、稀少な染色体異常症候群とされてきました。

以下では、まずはじめに4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)がどのような特徴を有する病気なのかを特徴や原因、主な症状、治療法など、あらゆる観点から解説します。

4p欠失症候群とは?

4p欠失症候群とは、4番染色体の一部(短腕4p16.3領域)の遺伝子が微細欠失することで引き起こさせることを原因として発症する病気を指します。この病気は、1961年にクーパー先生と、ヒルシュホーン先生によって初めて報告され、「ウォルフ・ヒルシュホーン症候群」(WHS)とも呼ばれ、現在厚生労働省から指定難病とすべき疾病として認められています。

4p欠失症候群の発症確率は50,000人に1人程度と推定されていますが、欠失などの症状が軽度の場合は見過ごされている可能性もあるため、実際はもう少し頻度が高い病気とされています。女性と男性の比率は2:1です。

また4p欠失症候群は先述したとおり、4番染色体短腕の遺伝子が欠失することで引き起こされる病気で、難しい用語で「染色体異常症」(染色体の数や形の変化で起こる病気)と呼びます。染色体異常症があると、通常の検査では見つけ出すことが難しく、従来の検査形式ではなく、微小欠失症候群及び微小重複症候群が検出することが可能な高度な検査が不可欠になります。

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4p欠失症候群が発症する原因

従来、ヒトの遺伝子情報は、染色体と呼ばれるものの中に含まれています。ヒトの細胞の核の中には、23対・46本の染色体が含まれており、1〜22番までの各1対の計44本の常染色体と、性別を決定する1対2本の性染色体が存在します。

4p欠失症候群は、染色体検査によって、この内の4番目の染色体短腕(4p16.3領域)に欠失があることが証明され、遺伝子情報が失われることで発症すると考えられています。

この病気が発症する多くは、遺伝的なものではなく、過半数は突然変異による単純な欠失になります。しかし、一部では両親の病気が素因していることもあるため、この場合に限っては一定の確率で子どもに発症することも想定されます。また原因の一部には、WHSC1(Wolf Hischhorn Syndrome Candidate 1)はヒストンメチル化酵素であり、4p欠失症候群(ウォルフヒルシュホーン症候群)の症状の一部は、ヒストンメチル化の異常と関連するともされています。

また4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)が発症する約75%の患者が新規の4p16の欠失、その他にも約12%の患者が4番染色体などの頻度が低い構造異常、約13%の患者が親の均衝型相互転座の結果に由来する不均衝型相互転座により4p16領域の欠失によるものとされています。

4p欠失症候群の主な症状

4p欠失症候群は、欠失する染色体の範囲によって症状が異なるため、同じ病気を罹患する場合でも症状が異なります。

以下では、4p欠失症候群の具体的な症状について紹介します。

特徴的顔貌

4p欠失症候群のもっとも特徴的な症状にあげられるのが特徴的顔貌(顔立ち)です。

具体的には、突出した眉間(ひたい)や高く弓状の眉毛、広い鼻梁、離れた目(眼間開離)、下方を向いた口、上まぶたの垂れ下がり(眼瞼下垂)などが主な特徴であり、「ギリシャ兵士のヘルメット様」と称されることもあります。これらの症状は、すべての患者で出生時から小児期に認められるものだが、次第に軽度になり、思春期には目立たなくなります。

成長障害

4p欠失症候群の症状の一つには成長障害も含まれます。

この症状は、子宮内にいるときから始まり、出生後も継続的に成長障害が見られ、すべての症状を罹患される方に該当します。

そのほかの症状及び合併症

4p欠失症候群はそのほかにも、筋緊張低下や難治性てんかん、接食障害といった症状だけでなく、消火器系や泌尿器系の異常、難聴、先天性心疾患、睡眠障害などの疾患もみられることがあります。

H44p欠失症候群の具体的な治療法

4p欠失症候群は、特徴的な顔貌や精神発達の遅延、成長障害などあらゆる症状が想定されますが、それぞれに対応した対症療法的に治療を行うことになります。そのため、診断後は起きやすい症状に対する早期診断や症状を軽度にするための適切な治療を適宜おこなうことが重要です。

4p欠失症候群の場合、具体的な治療法としては薬物投与や各種診断などの治療、また理学療法をはじめとする療育的支援の2つに分類することができます。

例えば、精神発達の遅れに対しては、運動発達や社会性、言語や認知の各要素を伸ばすための訓練など、個人にあったリハビリテーションプログラムを行います。

4p欠失症候群の患者が引き起こすけいれんについても、抗けいれん薬(バルプロ酸)の投与を適切に開始すること、摂食障害であれば、スキルにフォーカスした摂食訓練、骨格奇形であれば早期段階からの治療(理学療法及び外科手術)などを行うことが主な治療法とされています。合併症についても、医療機関より推奨させる治療及びケアを適切に行うことが求められます。

本記事では記載した症状に対する治療法は、あくまでも4p欠失症候群を発症した上でおこう代表的な治療法を指しており、個人に帰結したものではありません。

より安定的かつ効果的な治療を目指すのであれば、4p欠失症候群に精通する担当医のもと、個人にあった適切な治療法をおこなうようにしてください。

4p欠失症候群の注意点

4p欠失症候群の患者さんは症状や合併症の内容や治療状況に応じて、注意すべき箇所が異なります。例えば先天性心疾患があったり、難治性てんかんがみられる場合には、担当医によって適切な抗てんかん薬の単剤あるいは多剤併用や、医師のもとでの定期的な診察及び運動や食事に対する制限がかかることもあります。

そのため、4p欠失症候群を発症された場合、本人だけでなく家族も含め病気に対する理解度を深めた上で、担当医の指示を守ることが重要です。

また4p欠失症候群には、発達障害といった症状も含まれます。

発達障害についは、まだ解明されていない分野も多く、明確な診断基準や注意点がありません。そのため、病院や医療機関での定期的な療育的支援に加え、各施設への通園、それぞれの特性に応じた薬物治療なども選択肢に含め進めていくことが重要です。

場合によっては、それぞれの機会が逆効果で症状が悪化することもあるため、4p欠失症候群の性質だけでなく、障害の種類や状態を把握した上で、支援を行うようつとめるようにしましょう。

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4p欠失症候群とNIPT(新型出生前診断)の関係性

従来の出生前診断では、母体や胎児へのリスクや検査制度の低さが課題として挙げられていました。しかし、新たに開発された新型出生前診断(NIPT)を行うことで、3種類の常染色体だけでなく、性染色体を含むすべての常染色体の検査をすることが可能になります。

以下では、新型出生前診断(NIPT)の特徴をはじめ、4p欠失症候群との関係性について解説します。

NIPT(新型出生前診断)とは?

新型出生前診断(NIPT)とは、「無侵襲的出生前遺伝学的検査」や「母体血胎児染色体検査」などと呼ばれ、母体から採血を行い、その採取した血液を検査することで、胎児(赤ちゃん)のDNA断片を分析することで、染色体異常を調べる検査のことを指します。

またNIPTで陽性の場合、羊水検査(FISH法、マイクロアレイ法)で確認します。(確定診断)

新型出生前診断は、通常行ってきた採血による母体血清マーカーなどの出生前診断と比較して、感度(検査で陽性かつ出産後も陽性という確率を示す)及び特異度(検査で陰性かつ出産後も陰性という確率を示す)の観点から検査精度が極めて高い点が特徴として挙げられます。

また4p欠失症候群は、数多くの身体的な合併症を伴う病気のため、新型出生前診断だけでなく、合併症に応じた追加検査も検討することが重要です。

新型出生前診断の特徴は次のとおりです。

母体及び胎児へのリスクが回避できる

従来の確定的検査(羊水検査や絨毛検査)では、流産や死産など、母体及び胎児へのリスクが存在します。その一方、現在推奨させる新型出生前診断であれば、採血のみで検査ができるだけでなく、従来の感度と比べても感度と精度が高いため、より正確な異常染色体数をリスクがなく、安全に検査することが可能です。

しかし、NIPTはあくまでも非侵襲性の遺伝子検査になるため、確定診断(羊水検査)をおこなう必要があることは変わりはないので、その点についてはあらかじめ理解しておくことが必要になります。

早期段階から検査可能

従来の非確定的検査(母体血清マーカー、コンバインド検査)は、どれだけ早くても妊娠11週以降でないと検査することができませんでした。しかし、新型出生前診断(NIPT)であれば、妊娠10週以降から受けることができるため、早期に胎児の状態について知りたいと思う妊婦さんにとっては有益な手段と言えます。

4p欠失症候群とNIPT(新型出生前診断)の関係性とは?

従来の出生前診断では、3つの染色体異常13トリソミー(パトウ症候群)をはじめ、18トリソミー症候群、21トリソミー(ダウン症候群)を調べるのに有効で、すべての染色体異常と比較すると2/3程度となります。

そのため、以前の検査では染色体疾患を確定診断するものではなく、あくまでも可能性の一部を診断する、いわゆる「非確定検査」の位置付けとされてきました。しかし新型出生前診断(NIPT)を用いることで、従来の13、18、21トリソミーなどの基本検査だけでなく、4p欠失症候群などが含まれる微小欠失症候群に関する検査を極めて高い精度で実施することが可能なため、出生前に不安を抱える妊婦さんに安定的な診断結果を提供することができるようになりました。

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まとめ

染色体異常によって起こる4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)は、比較的小さな分節内で発生するため、微小欠失症候群(微笑重複症候群)に分類されており、通常の染色体検査では診断が難しいとされてきました。

したがって、発症しても病気自体を見過ごされるケースも多く、未だに正確な数字が証明できていません。

しかし近年、NIPTは新型出生前診断として、母体に負荷をかけない形で、胎児の染色体異常を感度・特異度ともに高い制度で行える検査として注目を浴びています。

そのため、今後は4p欠失症候群を早期かつ正確に発見することだけでなく、それぞれの症候群に対する適切な処置や対策、治療法を事前に検討することにも寄与します。

従来の非確定的検査とは異なり、より高い検査制度(感度・特異度・陽性的中率)を誇るNIPT(新型出生前診断)は今後ますます社内的に注目を浴びる検査となります。

これを機に、「4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)」及び、その他の微小欠失症候群(微小重複症候群)に対する理解度を深めるだけでなく、新たに行われるNIPT(新型出生前診断)についても知識を習得することで、より闊達な議論が行われることが期待されます。

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