クラインフェルター症候群とは?【医師監修】

クラインフェルター症候群は、男児にみられる先天異常です。具体的には、性染色体であるX染色体の過剰によって起こります。この記事では、クラインフェルター症候群の症状や原因、治療法について紹介します。

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おなかの赤ちゃんの染色体数の異常を知る検査に、新型出生前診断(以下、NIPT)があります。NIPTは妊婦さんに採血を行い、血液中に含まれる胎児由来のDNAのかけらを調べることによって、染色体数の異常がないかどうかを調べます。

 一方で、NIPTで明らかになるのは、常染色体数の異常による先天異常です。この記事では、NIPTの検査で分からない「クラインフェルター症候群」について解説します。これからNIPTの受検を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

クラインフェルター症候群とは?

クラインフェルター症候群は、性染色体の数の異常によって起こる先天異常で、男の子にみられます。男性ホルモンであるテストテロンの量の低下にともなう症状があります。性染色体数の異常による先天異常の中では、頻度が高い病気で、出生男児の500人に1人の割合で発生するというデータがあります。

一方で、クラインフェルター症候群の方の中には診断がされずに、社会の中で普通の生活を送っている方も多くいます。おおよその数値ですが、クラインフェルター症候群のうち、60~70%(※1)の人の診断がされていないという報告もあります。

クラインフェルター症候群は、性染色体の数の異常によって起こります。NIPTの認可施設ではクラインフェルター症候群の可能性があるかどうかを調べることはできません。一方、無認可施設では、指定以外の染色体異常の検査もしているので、暗いフェルター症候群の可能性の有無について知ることができます。

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クラインフェルター症候群の原因

クラインフェルター症候群は男の子の赤ちゃんは、余分なX染色体を持つことによって生じます。クラインフェルター症候群の原因を知るうえで役立つのが、性染色体と受精の仕組みについて知ることです。

性染色体と受精のメカニズム

染色体は遺伝情報を持ったDNAが折りたたまれた構造体で、生体の1つひとつの細胞の核に存在しています。染色体は対をなしており、22種類の常染色体と、2種類の性染色体(XXとXY)から成ってます。

性染色体は生体の性別を決定するもので、男性なら「XY」、女性なら「XX」の組み合わせとなります。ほとんどの細胞では、対になった23種類の染色体を有しますが、唯一の例外となるのが、生殖細胞です。

生殖細胞は男性なら精子、女性なら卵子があります。精子は対ではない22本の常染色体とY染色体またはX染色体を持ちます。一方、卵子は、対ではない22本の常染色体とX染色体を持ちます。

受精によって精子と卵子が結合すると、受精卵は22対の常染色体と1対の性染色体になります。このとき性染色体の組み合わせが、「XY」なら胎児は男の子、「XX」なら女の子となります。その後、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、母親の体内で成長していきます。

クラインフェルター症候群はX染色体数の異常で起こる

前述したように、健康な男の子の赤ちゃんの性染色体が「XY」となります。一方、クラインフェルター症候群では、性染色体が「XXY」や「XXXY」など、過剰なX染色体を持つのが特徴です。余分なX染色体の数が多いほど、障がいの程度が重くなる傾向があります。

クラインフェルター症候群の余分なX染色体のほとんどは、母親由来のものであることが分かっています。これは加齢などにより卵子の老化するため、対となっている性染色体(XX)の分離がうまくいかないために起こるためです。出産年齢の高齢化は、性染色体数の異常を起こりやすいことを示唆するものです。

そのほかにも、父親の精子のXY染色体の分離が不十分で、男性由来のX染色体が過剰になったり、受精卵の細胞分裂の不具合によって、余分なX染色体を生じることが明らかになっています。

クラインフェルター症候群の症状

クラインフェルター症候群の多くの場合、赤ちゃんから子どもの時期で、目立つ症状が現れることはありません。そのため、出生前診断などで事前に把握しない限り、親御さんが子どもの持つ障がいに気づくことはまれといえます。

しかし子どもが思春期を迎えると、男性らしさである二次性徴の未熟がみられ、医療機関を受診する方もみられます。クラインフェルター症候群の具体的な症状には、以下のものがあります。

クラインフェルター症候群の身体的な症状

クラインフェルター症候群の男児は、身長が高く、手足も長くなる傾向があります。一方で、男性の生殖器官である睾丸のサイズは小さくなる傾向があります。睾丸は男性ホルモンである「テストステロン」が生成される器官です。クラインフェルター症候群では、テストステロンの生成量が低下するため、思春期以降の男性らしさの発現が弱くなる傾向があります。

そのため思春期を迎えても、精巣が小さいままで、ひげや陰毛の量が少なくなります。反対に、女性のような胸の膨らみがみられるようになります(女性化乳房)。そして多くの場合、クラインフェルター症候群の男性は、精子が作れずに生殖能力を持ちません。

一方でクラインフェルター症候群の男性でも、精巣が発達するケースもみられます。このようなケースでは、精巣で精子が作られるため、生殖機能を有している状態となります。

クラインフェルター症候群により生殖機能の低下がみられたとしても、性行動には影響はありません。精子が全く作られない場合でも、勃起や射精機能は保たれます。また、クラインフェルター症候群では、「好きな人が同姓である」性同一障害は、健康な男性の人との差もみられません。

クラインフェルター症候群の精神的な症状について

クラインフェルター症候群の男児は、知能は普通程度かやや低くなる傾向があります。言語能力が十分でなく、話しをしたり文字を読んだりすることが得意ではありません。学校等のコミュニティーで学習障害を抱えることがあります。また、そのほかの男の子と比べて、自信や活発性が低く、受動的で内気な傾向があります。

クラインフェルター症候群でなりやすい合併症

クラインフェルター症候群の寿命は、健康な男性とほぼ変わりません。一方で、クラインフェルター症候群を抱えている場合、ほかの男性と比べて以下の病気になりやすいことが分かっています。

悪性腫瘍

悪性腫瘍は一般的にがんといわれるもので、なんらかの原因により、異常な細胞の増殖が起こる病気です。悪性腫瘍の中には、増殖スピードが速く、他の臓器に転移を起こすため、命にかかわることも少なくありません。

クラインフェルター症候群では、一部の悪性腫瘍の発生頻度が高くなることがあります。具体的にリスクが高いとされる悪性腫瘍には以下のものがあります。

乳がん

女性のがんというイメ―ジある乳がんですが、頻度は少ないものの男性にもみられるがんです。クラインフェルター症候群の男性が乳がんになる頻度は、ピークが70歳で、女性が乳がんになるリスクよりも低くなります。

非ホジキン腫リンパ腫

血液中に含まれるリンパ球ががん細胞化して、無制限に増殖する悪性腫瘍です。リンパ球は体内に侵入した異物を除去する働きがあるため、がん化することで免疫機能の低下も起こります。

なお、クラインフェルター症候群が悪性腫瘍を引き起こす原因についてははっきりしていないものの、過剰なX染色体により、体内のホルモン環境のバランスが崩れるためと考えられています。

骨粗しょう症

骨の密度が低くなり、骨がスカスカになる状態をいいます、骨粗しょう症になると、骨が弱くなるので骨折しやすくなります。

骨密度は女性ホルモンである「エストロゲン」と相関があり、閉経後の女性によくみられる症状です。女性の場合、エストロゲンは卵巣から作られますが、男性の場合、テストテロンを原料に作られます。

クラインフェルター症候群ではテストテロンが少ないため、産生されるエストロゲンの量も少なくなります。

自己免疫疾患

体を異物から守る免疫機能が過剰に反応して、自分の細胞を攻撃してしまう病気です。自己免疫疾患は、攻撃を受ける部位によってさまざまな種類があります。

糖尿病

糖尿病は血液中の糖である血糖が高くなっている状態をいいます。男性ホルモンの分泌と血糖値の数値には関連があることが分かっています。クラインフェルター症候群で男性ホルモンが減少すると、代謝異常による肥満が起こりやすくなるため、血糖値が増悪しやすくなります。

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クラインフェルター症候群の検査

クラインフェルター症候群は、血液検査によってDNAを解析することによって診断することができます。一方で多くの場合、思春期以降に症状が顕著にみられることが、病気の診断を受けるきっかけとなります。

思春期前にクラインフェルター症候群と診断されるケースは、全体の10%未満[h3] といわれています。

クラインフェルター症候群の治療やサポート

クラインフェルター症候群を持って生まれてきた男児に対して、根本的な治療はありません。一方で、症状に対する以下のような治療が行われます。

ホルモン補充療法

クラインフェルター症候群で、血液中のテストテロンが低い場合には、ホルモン補充療法が行われます。ホルモン補充療法は、2~4週間に1回、テストテロンの筋肉注射を行います。

一般にクラインフェルター症候群の場合、思春期からホルモン補充療法を始めて、生涯治療を続けることが勧められています。思春期でのホルモン療法は、二次性徴の発現を助けるため、筋肉量の多い男性らしい体つきになるメリットがあります。また、20代にピークを迎える骨密度を増やす効果もあります。

思春期以降も治療を続けることで、メタボリックシンドロームを予防し、糖尿病になるリスクを下げることができます。

なお、ホルモン補充療法では、精子の数を増やすことができません。そのため、男性原因の不妊症の治療効果はないので注意しましょう。

ホルモン補充療法は大きな副作用はほとんどありませんが、以下のような症状が現れることがあります。

  • にきび
  • むくみ
  • 赤血球の増加
  • 前立腺の病気

そのため、クラインフェルター症候群でホルモン補充療法を受けるときは、定期的に心臓、腎臓、前立腺の健康状態を確認する必要があります。

不妊治療

不妊の症状を持つクラインフェルター症候群ですが、不妊治療によって子どもを持てる可能性もあります。

精液の中に精子が確認できる場合(乏精子症)

顕微授精によって、妊娠が成立する可能性があります。具体的には顕微鏡下で、卵子に直接精子を注入して、人工授精を行います。

精液の中に精子が確認できない場合

精巣に針から吸引したり、小さく切開したりすることで、精子を採取します(精巣内精子回収法)。精子が見つかった場合は顕微授精に使用します。クラインフェルター症候群は約40%の方が、精巣内精子回収法で精子が見つけるという報告もあります(※1)。

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療育

療育は主に発達障害のある子どもに対して行われる治療教育です。日常生活に困らないように、専門的なトレーニングを行います。クラインフェルター症候群の男児で行われる療育は、言葉を使ったコミュニ―ケーション方法の訓練です。

遺伝カウンセリング

本人への治療ではありませんが、クラインフェルター症候群で大切となるのが遺伝カウンセリングです。染色体異常など遺伝子にかかわる病気やその診療は、非常にデリケートな問題です。遺伝カウンセリングは、医師などの専門家により、家族や患者様本人の意思決定をサポートするものです。

クラインフェルター症候群の男児に対して、先天的な障害を持つことを伝えることは、家族にとっての課題でもあります。ただし、自分の子どもが障害を持っているかどうかを知る権利もあるように、“知らないでいる権利”もあります。

クラインフェルター症候群について知るかどうかは、子どもの状況や理解度によって異なります。病気について告知するとしても、一度に全てを語る必要はありません。

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まとめ

クラインフェルター症候群は、性染色体数の異常による先天異常の中でも、比較みられる病気です。性染色体数異常の割合は、全体の先天異常のうち5%です。

認可施設のNIPT検査で陰性になっても、そのほかの先天異常の可能性がゼロではないことを覚えておくことが大切です。NIPTの検査でクラインフェルター症候群かどうかを知るには、性染色体の検査を行っている無認可施設で検査を受ける必要があります。

ヒロクリニックでは今回ご紹介したクラインフェルター症候群をはじめとする性染色体異常の検査を行っております。ご検討ください。

クラインフェルター症候群は、男児にみられる先天異常です。具体的には、性染色体であるX染色体の過剰によって起こります。この記事では、クラインフェルター症候群の症状や原因、治療法について紹介します。

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記事の監修者

水田 俊先生

水田 俊先生

ヒロクリニック岡山駅前院 院長
日本小児科学会専門医

小児科医として30年近く岡山県の地域医療に従事。
現在は小児科医としての経験を活かしてヒロクリニック岡山駅前院の院長として地域のNIPTの啓蒙に努めている。

略歴

1988年 川崎医科大学卒業
1990年 川崎医科大学 小児科学 臨床助手
1992年 岡山大学附属病院 小児神経科
1993年 井原市立井原市民病院 第一小児科医長
1996年 水田小児科医院

資格

小児科専門医

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